相続と絆の証明 - パートナーシップ宣誓制度の重要性と課題

 今回は、相続に関する特別な側面に焦点を当て「パートナーシップ宣誓制度」と「相続」についてお話ししたいと思います。

 相続と言えば、遺産の分配や法的手続きが頭に浮かびますが、一緒に生活し、絆を築いてきたパートナー同士の相続はできるの?パートナーシップ宣誓制度と相続についてご紹介します。

この記事では、パートナーシップ宣誓制度の基本から、相続手続きにおける役割、実際のケーススタディまで、包括的に探っていきます。ご自身やご家族、友人との関係において、これがどれほど重要かを理解し、今後の人生の計画に活かしていただけると幸いです。

目次

パートナーシップ宣誓制度とは

パートナーシップ宣誓制度は、カップルやパートナーシップ関係にある人々が、パートナーシップを証明し、相互の権利と責任を明確にするための制度です。この制度は、結婚ではなく、パートナーシップに基づく関係に適用されます。

 パートナーシップ宣誓制度は、同性カップルや非婚のパートナーシップ関係にある人々が、法的な保護と認知を受ける手段として導入されました。結婚と同等の法的効力を持たせることで、パートナーシップ関係にある人々の権利と責任を保護し、社会的に認知されるようになります。

対象者の要件と手続きの方法(福岡市の場合)

次の全てに該当する。一方または、双方が性的マイノリティの2人。

・双方が成人であること

・一方または双方が市内に住所を有してる、または市内への転入を予定していること

・双方に配偶者がいないこと及び他にパートナーシップの関係がないこと

・双方の関係が近親者でないこと(パートナーシップに基づく養子縁組は除く)

宣誓の方法(福岡市の場合)

(1)宣誓する日時を事前に予約(福岡市役所)

(2)必要書類を揃え、予約した日時に2人で市役所へ

(3)市職員の面前で宣誓書記入

(4)宣誓書の写しと宣誓書受領書の交付

※必要書類:住民票の写し・独身証明書

パートナーシップ宣誓制度のメリット

・病院の付き添いなどで家族として扱ってくれる

公営住宅などに家族として入居できる

・生命保険の受取人に指定できる

・携帯電話契約などの際に家族割引が適用される

・住宅ローンが適用される場合がある

パートナーシップ宣誓制度の課題

・パートナーシップ宣誓制度を導入していない自治体がある

配偶者控除を受けられない

・親権を持てない

・遺族給付金を受給できない

パートナーシップ宣誓制度 最大の課題

法的に婚姻として認められない

・パートナーは法定相続人になれない

・生命保険金の非課税枠を使えない(500万円×法定相続人=非課税)

実際の事例

 死別した同性パートナーの火葬への立ち会いを拒否され、二人で築きあげた財産を相続できなかったのは不当だとして、大阪府内の男性が親族に慰謝料700万円の支払いと財産引き渡しを求めていた訴訟した事件がありました。

背景

 男性は長年亡きパートナーと同居しており、二人は男性が実質経営する事務所の収入で生活していました。名義としては亡きパートナーが事務所の代表者になっていましたが、実質的には男性が働いて生計を立てていました。

男性の主張と親族との争い

 男性と亡きパートナーは、相互に財産を相続できるよう、養子縁組の手続きをすることを約束していました。しかし、手続きを開始する前、2016年3月にパートナーが突然亡くなりました。

亡きパートナーの親族の女性(妹)は、同居する二人の関係を一度は理解しているように見えましたが、死後に態度が一変し、葬儀で家族の席に座ることや火葬への立ち会いを拒否しました。また、夫婦同様に長年連れ添ったことに対しても「何の意味もない」との発言がありました。親族女性の代理人弁護士は「あなたには何の権利もない」と主張し、さらに、パートナー名義の通帳を持ち出したり、事務所の廃業通知を勝手に取引先に出したりして、事業が続行できない状況を招き、男性は多大な精神的苦痛を受けました。

裁判と判決

 男性は、亡きパートナーの親族女性に対して慰謝料700万円の支払いと、亡きパートナーが生前に約束した財産の引き渡しを求めて、大阪地裁に訴えを起こしました。

 一審判決が大阪地裁で下されましたが、裁判長は、亡きパートナーが同性愛者であることを親族に隠していたことを指摘し、親族は男性について「(亡きパートナーが)雇用している従業員で、同居の居候と認識していた」と主張し、夫婦同様の関係にあるとは認識されていないと判断しました。男性側は、生前に財産贈与の合意があったとも主張したものの、裁判長は「男性の供述以外に証拠がない」として、合意の成立を認めず、男性の訴えを退けました。

 男性は判決を不服とし控訴しましたが、今回の二審判決で、大阪高裁は一審の判決を支持し、男性の訴えを棄却しました。

パートナーシップ宣誓制度と相続と終活対策

前述した通り、パートナーシップ宣誓制度には婚姻のような法的効力はありません。

そのためパートナーには相続権などがありません。大切なパートナーの生活を守るための対策をご紹介します。

死因贈与の契約を締結する

・遺言書を作成する(パートナーに遺贈や遺言執行者の指定)

・養子縁組をする

・生命保険の活用

・任意後見契約を締結しておく

・家族信託(民事信託)を利用する

まとめ

今回は「パートナーシップ宣誓制度」と「相続」に焦点を当てました。

パートナーシップ宣誓制度について基本的な情報を紹介し、そのメリットと課題点を検討しました。制度のメリットは、病院での付き添いや公営住宅への入居など、家族としての権利を増やす点です。一方、制度の普及が進んでいない地域や法的制約による課題もあります。 相続や終活対策を考える上で死因贈与や遺言書の作成、養子縁組、生命保険の活用、任意後見契約、家族信託などの対策をご紹介させていただきました。大切なパートナーと安心した共同生活を送るためには事前準備をすることが大切です。皆さんが幸せな生活を送り、将来に備えられるよう願っています。

 私は福岡県の相続・終活専門の行政書士です。パートナーシップ宣誓制度を含む相続や終活に関するサポートをしています。初回の相談は無料ですので、遺言書の作成や終活についての相談、何から始めていいかわからない方はお気軽にお問い合わせください。

初回の相談無料

◆パートナーシップ宣誓制度の利用を検討している

◆相続・終活準備を検討している

◆パートナーシップ宣誓制度について詳しく教えてほしい

◆家族には相談しづらい

◆すでに相続でお困り

gyosei-matsuoka-h.com